Entertainment

映画「地雷を踏んだらサヨウナラ」

Entertainment

【ネタバレなし】
銃の代わりにカメラに命をささげた男の実話
『地雷を踏んだらサヨウナラ』が心から震えたので徹底紹介!

バングラデシュ、ベトナム、カンボジア等、内戦が激化した時代に、約2年間報道写真家として各地を駆け抜け、26歳という若さでこの世を去った、実在した日本人、一ノ瀬泰造の半生を描いた映画「地雷を踏んだらサヨウナラ(原題:One Step On A Mile, It’s All Over)」をご紹介します。 視聴サイト

「地雷を踏んだらサヨウナラ」

あらすじ

1972年4月カンボジア。内戦が激化し、銃を抱えて走る兵士たちの中に、カメラのレンズを覗き込みながら走る青年がいた。報道写真家として激動地帯に飛び込んだ一ノ瀬泰造。命からがらとってきた写真も、なかなか高く売れずに苦悩する日々が続く。ある日、お世話になっていた村で子どもたちと遊んでいると、空爆が直撃し、小さな命が犠牲になってしまうのを目の当たりにした泰造。様々な体験をする中で、当時のカンボジアを制圧していたクメールルージュの象徴だったアンコールワットを、自分のカメラで収めたい、という想いが次第に増していく。
「アンコールワットを撮りたい、できればクメール・ルージュと一緒に。地雷の位置もわからず、行き当たりドッカンで、最短距離を狙っています……」
「うまく撮れたら、東京まで持っていきます。もし、うまく地雷を踏んだら、サヨウナラ!」そう書き残し、アンコールワットを求めひとり突き進む…。

製作秘話

一ノ瀬泰造という実在した一人の青年の半生を描いたこの作品は、どうして人の心に強く突き刺さるのか?

それは今や名俳優となった浅野忠信が『一ノ瀬泰造の生き写し』といわれるほど、一ノ瀬が乗り移ったごとくの演技で観る人々を魅了してきたからです。一ノ瀬泰造と浅野忠信は、浅野本人が認めるほど瓜二つで、撮影時の年齢も当時の一ノ瀬とほぼ同年齢でした。なんといっても、一ノ瀬が行方不明となった日に浅野忠信が生まれたことは奇遇なのか、本当に生まれ変わりなのか…。そんな運命を感じながら主演を担った浅野の演技はまさに圧巻です。
また、五十嵐匠監督は戦場カメラマン沢田教一のドキュメンタリー映画『SAWADA』も手掛けた巨匠で、戦場の熱気が伝わるよう、現地での撮影にこだわり、リアリティーあふれた作品に仕上がりました。

評価

4.0

この作品は、一人の青年の半生を淡々と紡いでいく物語になっており、戦渦での実際の生活を大きなアレンジを加えずまっすぐに伝えています。そのため、一ノ瀬泰造の感情の変化、熱い野望に突き動かされていく描写がびしびし伝わってきます。
歴史や戦争に興味のない方でも見やすく、知らないうちに一ノ瀬泰造の『生き様』に見入ってしまう、そんな作品になっています。

注目ポイント
『死んでも叶えたい夢はあるか?』と心に問いかけてくる映画

①当時の時代背景を知ると作品の深みが増す!

作品中には一ノ瀬泰造が生きた時代背景を丁寧に説明するシーンはないですが、彼の時代背景を知っておくとより楽しめます。彼が日本で過ごした1960年代は若者の反逆時代でした。ビートルズを中心に、心に訴えかけるようなロックが世界中で流行し、日本でもそこかしこで若者の社会運動が巻き起こされていました。そんな熱気に包まれた時代を過ごしたからこそ、彼自身も野望に全てを任せ、身一つで戦場に乗り込んだのです。彼がどうしてカンボジアにこだわったのか、時代背景を読み解きながら見ると違った面白さが見つかるかも…!

②一ノ瀬のカメラの扱いの変化に注目!

冒頭のシーンでは、訳もわからずひたすらシャッターを切りながら闇雲に走る一ノ瀬の姿が印象的です。最新のカメラを持てばいい写真が撮れる、そんな風に思っていた一ノ瀬でしたが、だんだんと彼の写真の撮り方やカメラに写すものが変化していきます。また、爆弾の音が一つした瞬間、銃を手に取る軍人のごとく、カメラを構える姿は、命をカメラに託した男の生き様が描かれていて、胸が熱くなる注目シーンです!

③アンコールワットに対する一ノ瀬の想いに注目!

当時クメールルージュを象徴するものだったアンコールワットを初めて一ノ瀬が目にしたのは、ジャングルから一瞬だけ覗かせる塔のてっぺんでした。一ノ瀬は、遠目で小さく見えただけのアンコールワットに、年月が経つほどに魅了されていきます。その心の奥底には、尊い命を奪われてしまった村の子どもに対する一人の『友人』としての想いや、一人の『報道写真家』としての使命感が交差しており、彼の葛藤を覗くことができます!

眩しすぎるほどの輝きを放つ生き様

日本で帰りを待つ両親、報道写真家の同士、村で共に過ごした第二の家族…沢山の人に愛されていた一ノ瀬泰造。多くの人に好かれる反面、戦場の生々しい光景を写真を収めることに否定的な意見を受けるシーンも作中で登場しますが、それでも自分の心の声に素直に進み続ける姿は、大人になるにつれ忘れてしまう童心を思い出させてくれます。
「好きになること、夢中になることに真っ当な理由なんて必要ない」
そんな風に背中を押してくれる、熱くて儚い作品です。
人生に疲れたとき、道に迷ったとき、ぜひご覧ください!

作品情報

制作年1999年
制作国日本
上映時間111分
監督五十嵐匠
脚本丸内敏治、五十嵐匠
原作丸内敏治、五十嵐匠
出演浅野忠信、川津祐介、羽田美智子、市毛良枝
受賞歴2000年 第14回 高崎映画祭 主演男優賞受賞

視聴サイト