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映画「シアタープノンペン」

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【ネタバレなし】
‘‘カンボジア人が紡ぐカンボジア人の物語’’として名作となった
「シアタープノンペン」が伏線だらけで最高だった!

一人の少女とその家族を中心に巻き起こる様々な出来事を通して、カンボジアの多くの人々の心に影を落とす悲しい過去を、時空を超えて紐解いていく様子をドラマティックに描いた映画「シアタープノンペン(原題:The Last Reel)」をご紹介します。 視聴サイト

「シアタープノンペン」

あらすじ

カンボジア、プノンペンで自由な生活を送る女子大生・ソポン。家族との関係は微妙で夜遊びに出かける日々。その帰り道にたまたまたどり着いたのは廃れた映画館、そこで流れていた古い映画には母の姿が。女優として美しく煌めく母の姿、そして40年経ってもその母に想いを馳せていた映画館主。彼から映画の最終巻が内戦の混乱で紛失してしまったことを知らされたソポンは、病と闘う母に元気を与えたいと、自ら映画を完成させようと動き出す。最終巻の製作を進めるうちに露わになっていくクメールルージュ時代のそれぞれの過去、そして止まっていた歯車が動き出す…。

製作秘話

クメールルージュを取り上げる作品は他にもありますが、どうして特にこの作品はここまで世界から高い評価を得ているんでしょうか?

その一つに、クメールルージュに対する製作陣・演技陣の熱い想いがありました。 ソト・クォーリーカー監督は、アンジェリーナ・ジョリー主演『トゥームレイダー』のラインプロデューサーを務めたことをきっかけに映像作家の道に進みました。今作のインタビューの中で、「カンボジアを外から見る視点の映画だけでなく、私たちの国の、私たちの家族、私たちの感情の物語を、内部の視点から語る映画が必要だと感じた」と、カンボジアの悲しい過去と向き合う大切さを語っています。彼女自身も父親をクメールルージュ時代に亡くしており、自身の過去と葛藤してきました。また、ソポンの母親役はクメール・ルージュ時代を生き延びたカンボジア唯一の女優であるディ・サヴェットを起用し、当時のリアルな感情がひしひしと伝わる作品に作り上げられました。

評価

4.6

この映画は、表面上では一つの古い恋愛映画と一人の少女の成長を追いかける作品ですが、決してそれだけにとどまらず、カンボジアの暗黒時代との向き合い方や、女性の在り方について深く考えさせられる作品になっています。そして緻密な脚本によって散りばめられている伏線の数々!
ヒューマンドラマが好きな方はもちろん、ミステリー要素もあったり、歴史や重いストーリーは苦手…という方でも見入ってしまうような、見方によって様々な学びが得られる最高の作品になっています。

注目ポイント
『過去との向き合うこと』『愛すること』の大切さを教えてくれる映画

①社会に潜む課題に対する問題提起がされている!

この作品は、決してある一時代のみを取り上げているわけではなく、むしろ国や時代関係なく共通する、社会が抱えるステレオタイプな考え方に疑問提起するような作品です。主人公ソポンへの男性の目や、両親から教えられる「女性のあるべき姿」ー。そんなソポンを阻む様々な問題が降りかかる中でも、心に熱を帯び、挑戦をし続けるソポンを見て、周りの人々が物語が進むにつれてどう変化していくのか、ぜひ注目してみてください!

②古い映画館が辿ってきた歴史に注目!

物語が展開されるのはクメールルージュから約40年経った2000年以降。当時は様々な文化的なものが焼かれ、実際にカンボジアにはクメールルージュ以前の映画は30本ほどしか残っていなかったそうです。この作品の象徴でもある映画館は、クメールルージュの前の賑わいも、クメールルージュの際に避難所として逃げ込んできた人々の混乱も見てきました。古びた映画館が見てきた情景を想像すると、よりこの作品が深みを増していきます。注目してみてください!

③ソポンによって映画のクライマックスがどう完成させられるかに注目!

どうにかして母が出演した映画について知りたいと必死に訴えるソポンに、映画館主が語る映画の秘話。それを忠実に再現しようと製作を進める中で、女優としての母、厳格な父、そして映画館主の心に少しづつ近付いていきます。そして彼女が遂に作り上げた映画のクライマックスでの小さな舟で川を渡るシーンには、まさに『悲しみと向き合った先の姿』を鮮明に描写しています。温厚な性格として知られるカンボジアの国民性がどんな軌跡を辿って形成されてきたのか、全てが詰まっているラストになっています!

「ハリウッド映画じゃないから期待しない」?見終わった後、価値観ぶっ壊れます!

筆者自身、正直まったく期待していなかったんですが、個人的映画ランキングベスト5には食い込んできた、ダークホースのような作品でした。登場人物たちが語る『過去』には様々な伏線が散りばめられていて、最後の最後でやっとすべてが繋がる快感…!そしてなんといっても、見たくない過去とも真摯に向き合うことで、苦しみから解き放たれる瞬間を追体験できる。こんなに『生きること』に対して真剣に考えさせる映画はなかなか出会えないです。この映画に出会えたことに感謝して、今を生きるすべての人に、心からお勧めします。

作品情報

制作年2014年
制作国カンボジア
上映時間105分
監督ソト・クォーリカー
脚本イアン・マスターズ
出演マー・リネット、ソク・ソトゥン、トゥン・ソーピー
受賞歴2014年東京国際映画祭国際交流基金アジアセンター特別賞受賞
第3回(米)カンボジアタウン映画祭最優秀作品賞 特別功労賞受賞
第1回ASEAN国際映画祭&アウォーズ助演男優賞 他

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